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過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

近年、罹患者数が増加している疾患といわれていて、社会問題になっています。過敏性腸症候群とは、腸に炎症を生じたり、ポリープが発生していないにも関わらず、腹痛や便秘、下痢などが1ヶ月以上続いている状態です。症状の度合いによっては、日常生活に支障が出ることがありますが、排便に伴い症状が緩和されやすいです。ただし、自覚症状がないケースもあります。原因は、自律神経の異常により、腸の蠕動運動が上手く働かなくなることが発症に関係しています。なお、過敏性腸症候群は、IBS(Irritable Bowel Syndrome)といわれることもあります。確定診断を行う前に、大腸がんの有無を確認する必要があります。大腸カメラ検査を受けていただいて、他の疾患との鑑別を行います。気になる症状がありましたら、速やかに当クリニックまでご相談ください。

過敏性腸症候群の原因

ストレスが発症に関係していると報告されています。ストレスは、決して気持ちの問題ではありません。ストレス以外には、少しの刺激を受けただけで脳が痛みとして感じるパターンや、特定の食べ物を摂取することにより症状が出現するパターン、腸管内に表層から確認できないほどの炎症を生じているパターンなどが考えられます。具体的には、下記の仕組みによって症状が出現するのではないかといわれています。

ストレスを受ける → 不安な状態になる → 自律神経の内分泌が促進される → 腸の蠕動運動が活発になる・鈍くなる

また、過労や寝不足などの生活習慣により、疲労が蓄積されたり、ストレスを感じることも腸の機能に影響を与えます。蠕動運動が鈍くなると便秘を生じやすく、逆に活発になると下痢を生じやすいです。

過敏性腸症候群の症状?下記の項目に当てはまるかをチェックしましょう。8~10に1つでも当てはまる場合は、他の疾患の疑いがあります。

  1. 長期間、腹痛を生じている、もしくは腹部の不快感がある
  2. 下痢や便秘が続いている
  3. 便の形状が良くない状態が続いている
  4. 排便に伴って、一時的に痛みが緩和される
  5. 排便の回数がバラバラである
  6. 排便しているにも関わらず、便が残っているような感じがある
  7. 慢性的な便秘、もしくはコロコロとしたすっきりしない便が出る
  8. 血便を生じている
  9. 体重減少
  10. 夜間に腹痛を生じて、途中で起きてしまう

過敏性腸症候群の疑いがあるのは、1~7の症状に当てはまる場合になります。8~10の症状に当てはまる際は、深刻な疾患を発症しているサインかもしれません。速やかにご相談ください。

過敏性腸症候群の分類

下痢型

若年の男性に発症する傾向があります。

便秘型

女性に発症する傾向があります。

混合型

便秘と下痢を交互に生じます。

下痢型は若年の男性に発症する傾向があり、便秘型は女性に発症する傾向があるといわれています。腸の働きとホルモンが関係しているのではないかと考えられています。長期間、症状が続くと日常生活に支障が出ることがあります。気になる症状がありましたら、速やかに当クリニックを受診しましょう。

過敏性腸症候群の診断

ローマⅣ基準に沿って診断を行います。

過敏性腸症候群の診断基準

直近3ヶ月で1ヶ月のうち4日以上腹痛・腹部不快感があり、下記の項目に2つ以上当てはまる

  1. 排便することで症状が緩和される
  2. 症状によって排便回数が増減する
  3. 症状によって便が柔らかくなる、もしくは硬くなる

上記は、過敏性腸症候群だけに出現する症状ではありません。大腸カメラ検査を受けていただいて、大腸がんなどとの鑑別を行います。大腸カメラ検査は、がん化しやすい大腸ポリープや初期段階の大腸がんを見つけられます。大腸カメラ検査によって大腸疾患を除外してから治療を進められることが大切です。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

診断のポイント

  1. 診断を行う上で既往歴が重要になります。体重減少など身体的に異常がある場合は、大腸がんなどの疾患を除外する必要があります。
  2. 50歳以上の方で、これまでに大腸疾患に罹患したことがあり、ご家族にも既往歴がある場合は、上記と同じように診断を行います。
  3. 大腸カメラ検査や消化管造影検査を行って、類似疾患を除外します。
  4. 大腸カメラ検査が有効とされています。スクリーニング検査には、便潜血検査を推奨しています。潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸ポリープ、大腸がんなどでは、陽性反応を示します。
  5. 甲状腺や膵臓に異常がある場合も、便秘や下痢を生じやすいです。血液検査や尿検査を行う必要があります。
  6. エコー検査やCT検査を行うこともあります。

過敏性腸症候群の治療方法大腸がんなど他の疾患を除外した上で過敏性腸症候群の適切な治療を開始します。生活習慣の見直しや薬物療法が中心になります。

大腸カメラ

生活習慣を見直しましょう

1日3食、決まった時間に食事を摂りましょう。食べ過ぎや飲み過ぎに気をつけて、アルコールや脂質が多く含まれた食べ物を避けることが大切です。また、睡眠時間を確保して、ストレスをためないように心がけましょう。

上記の項目は、ガイドラインに記載されています。すでに、日常生活の中で気をつけられている患者様もいらっしゃると思いますが、念のためご確認ください。過敏性腸症候群を悪化させる要因には、食べ過ぎや飲み過ぎ、特定の食べ物を摂取することが指摘されています。まずは、患者様が悪化させやすい要因を認識されることが大切になります。なお、生活習慣を見直しても、症状が改善されない場合は、薬物療法を行うことがガイドラインの中で推奨されています。気になる症状がありましたら、当クリニックまでご相談ください。

下記の項目を参考にしましょう

  • 便秘型は、食物繊維が多く含まれた食べ物を摂取しましょう
  • 下痢型は、刺激物や脂質が多く含まれた食べ物を避けましょう。胃腸に優しい食べ物を摂取されることを推奨しています
  • 特定の食べ物を摂取して、症状が出現する場合は、誘発しやすい食べ物を避けましょう
  • 症状の改善には発酵食品が有効とされています
  • 症状の改善には適度な運動が有効とされています

薬物療法を行います

過敏性腸症候群は、下痢型と便秘型、混合型、分類不能型に分けられます。便の形状によっても、さらに分類することが可能です。患者様の症状に合わせて、適切な薬を処方いたします。また、ストレスが原因の場合は、心理療法を行います。効果が現れない際は、抗不安薬などを処方させていただきます。

下痢型・便秘型・混合型の場合

  • 消化管機能調節薬(腸の運動を整える)
  • プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌などが含まれる)
  • 分子重合体(便の水分バランスをコントロールする)

下痢型

  • セロトニン3受容体拮抗薬・5-HT3拮抗薬 (腸の運動機能の異常を改善させる)
  • 止痢薬

便秘型

  • 粘膜上皮機能変容薬(便を柔らかくする)

全般

  • 抗コリン薬(腹痛を改善させる)
  • 下剤(便秘に有効であり、頓服処方する)

心理療法を行います

ストレスが原因の場合は、心理療法を行います。効果が現れない際は、抗不安薬などを処方させていただきます。当クリニックでは、患者様の症状に合った適切な治療を心がけています。