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ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌とは、正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ菌」という胃の中に生息している細菌です。ピロリ菌は、体が細長くて片側に数本のひげが生えており、胃の粘膜の表面を活発に動いています。胃の粘膜や胃壁にダメージを与えるため、胃潰瘍や胃がんの発症リスクが上昇します。胃潰瘍のリスク要因としては、タバコや食べ過ぎ、飲み過ぎ、ストレスなどがあげられます。ピロリ菌感染によって、胃潰瘍の治療の効果が得られにくく、再発率が高くなることもあります。症状を悪化させないために、規則正しい生活習慣を送りましょう。

ピロリ菌の症状

胃炎を生じていても、自覚症状が現れることはありません。まれに、下記の症状が出現することがあります。

  • 胃・十二指腸潰瘍を発症すると腹痛を生じます(空腹時や食後にみぞおち付近に痛みを生じやすいです)
  • 胃がんを発症すると、すぐに満腹になり、嘔吐や腹痛、貧血、体重低下が現れます

自覚症状がない場合でも、何らかの疾患が進行しているケースもあります。逆に、胃の不快感があっても必ずしも疾患を発症しているわけではありません。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌検査における保険適用の有無ですが、ピロリ菌検査のみの場合は、保険適用することができません。胃カメラ検査により、慢性胃炎が疑われる場合に保険適用のピロリ菌検査を受けていただけます。ピロリ菌検査には、胃カメラを用いる検査と胃カメラを用いない検査があります。下記の項目で詳しく説明させていただきます。なお、検査期間や検査の回数については、ガイドラインに沿って進めていきます。

胃カメラを用いた検査

迅速ウレアーゼ試験

胃カメラを用いて、一部組織を採取します。ピロリ菌は、ウレアーゼといわれる尿素を持っています。尿素を分解させる酵素の活性を確認していきます。

鏡検法

胃の粘膜の組織に、特殊な染色を施します。顕微鏡によってピロリ菌の有無を確認していきます。

培養法

胃の粘膜を一部採取します。培養するまでにかかる期間は、5日~1週間程度になります。

胃カメラ

胃カメラを用いない検査

抗体検査

ピロリ菌に感染すると、体内に抗体が生成されます。抗体があるかを調べることによって、ピロリ菌感染の有無を判断できます。

尿素呼気試験

吐いた息を測定して、ピロリ菌の有無を調べていきます。尿素製剤を含んだ試験薬を服用して、容器に息を吹き込んでいただきます。ピロリ菌が保有するウレアーゼによって、尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解されます。吐いた息に含まれる炭酸ガスの量を確認して、薬の服用前と服用後の吐いた息を調べることで診断が可能になります。正確性の高い検査で、患者様の身体への負担が少なくて済むメリットがあります。

抗原法

便の中に、ピロリ菌の抗原があるかを調べていきます。当クリニックでは、迅速ウレアーゼ試験や尿素呼気試験、抗体検査を行っています。迅速ウレアーゼ試験は、検査結果が当日中に分かりますが、尿素呼気試験や抗体検査は2〜3日後に結果が出ます。我が国では、胃がんの罹患者数が多いといわれています。胃カメラ検査を行うタイミングで、抗原法も受けられることを推奨しています。患者様の身体への負担が少ない検査になりますのでご安心ください。

ピロリ菌の治療

下記の項目に当てはまる場合は、ピロリ菌検査が保険適用されます。

  • 胃カメラ検査で胃炎や胃・十二指腸潰瘍の所見がある、胃造影検査で胃・十二指腸潰瘍の所見がある
  • 胃MALTリンパ腫に罹患している
  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に罹患している
  • 初期段階の胃がんで胃カメラを用いた治療を行った

一次除菌療法

胃酸を抑制させる薬を1種類、抗菌薬を2種類、服用していただきます。服用方法は、それぞれの薬を同じタイミングで1日2回、1週間服用していただきます。

二次除菌療法

二次除菌療法一次除菌療法で処方されたものと同様の胃酸を抑制させる薬を1種類、抗菌薬を1種類、一次除菌療法で処方された種類とは異なる抗菌薬を1種類、服用していただきます。ピロリ菌に耐性がついている場合は、除菌効果が得られにくいため、他の抗菌薬を試していきます。服用方法は、それぞれの薬を同じタイミングで1日2回、1週間服用していただきます。尿素呼気試験や便中抗原検査によりピロリ菌の有無を調べることが可能です。

ピロリ菌の感染経路・予防方法

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌の感染経路について、はっきりとわかっていません。ただし、幼児期の井戸水や食べ物の口移しなどによるものが考えられています。大人よりも幼児期のほうが胃の中の酸性が弱いため、ピロリ菌が生息しやすい環境といわれています。我が国では、60歳以上の半数がピロリ菌に感染しており、水道設備が整っていない東南アジアでは、ほとんどの方がピロリ菌に感染していると報告されています。日本においては、現在、衛生環境の改善により感染は減少していますが、幼児期の食べ物の口移しは感染リスクが上昇しますので、注意しておきましょう。

ピロリ菌の予防方法

現時点では、ピロリ菌の予防方法は確立されていません。幼少期に食べ物の口移しを行ったり、水道設備が整っていない環境で、食事を摂ることによって感染すると報告されています。そのため、不衛生な場所で食事を摂らないように注意しましょう。ピロリ菌に感染したら、除菌治療を行う必要があります。除菌治療を行うことで、胃・十二指腸潰瘍は発症を防げますが、消炎鎮痛薬による胃・十二指腸潰瘍は完全に防ぐことが難しいとされています。除菌完了できたら、再度感染することはありませんのでご安心ください。また、ピロリ菌感染は、慢性胃炎を生じている状態になります。進行すると、胃がんを発症する可能性があるため、注意していただく必要があります。除菌完了できると、胃がんの発症リスクが低下するといわれています。なお、完全に胃がんの発症を防げるわけではないため、定期的に胃カメラ検査を受けられることを推奨しています。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。